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「お前は姫さまにずっと仕えてるわけだろ?」
「ああ、姫奴に選ばれた日から、一日も欠かさずお傍にいる。祠堂ではこんな風に離れることは鍛錬以外になかった」
「なら、お前は姫さまを女として意識したことはねえのか?」
おんなとしていしきしたことはねえのか。
ぽかんとして、墨は立ち止まった。
こいつは馬鹿か? 分かってからかっているのか? どっちだ?
立ち止まった墨を、霞とドリューが振り返る。全員が全員、きょとんとして見つめあう。狭い汽車の廊下のなか、一列に並びながら。
突然、墨を見ていたドリューが、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「あー、悪かったよ。お前に限ってねえか」
「……馬鹿にしてるのか」
「いや。お前はなんだっけ。特別な奴隷なんだろ?」
「姫奴だ。いい加減覚えろ」
「んな発音しにくそうな名前、覚える気もしねえよ。特別な奴隷、それで間違いないんだろ?」
「まぁ……そうだが……」
「お前も姫さまも、お互い特別な存在だが、俗っぽいもんじゃねえってことだよな」
勝手に質問してきて、勝手に納得して大笑いしている。なんとなく面白くない。
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