最悪のディナー

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 ドリューの言うことは間違いない。  姫を大事に思い、一番優先するが、それは愛情ではない。それが定めで、自分の存在意義だ。  女媧の子孫と、雷公に選ばれた奴隷。それが天籟の姫君と姫奴の本質的な立ち位置だ。  恋とか、愛とか、そういうものよりも強い結びつきがある。  ドリューと墨がぎゃあぎゃあやり合っている間、霞はうかない表情でため息を漏らした。 「姫さまがハンスさんをもし見初めていたら、どうすればいいのでしょう」 「逢引でもさせるか?」 「馬鹿かお前は、そんなことさせるわけないだろ」 「冗談に決まってんだろ。──ただなぁ、いくらなんでもあの冴えねえ記者より、もっといい男はいただろうよ。案外、姫さまは男の見る目はないのかもな」  ふふ、と霞は短く笑う。墨はイラっとしたけれど、ため息ひとつで同意した。  その通りだ。  恋に落ちるかもしれない。祠堂を出てからも、今まで姫の名前を直接聞いた人間なんていやしない。そんな無礼を……もしも、姫が心地よく感じていたのなら?  それでも、あんな冴えないような男じゃなくてもいいはずだ。  公国の大公世子と、あの記者なら、きっと大公世子の方がいい男に決まっている。
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