天籟国創世神話より

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天籟国創世神話より

 彼の地、山河あり。  雷公、彼の地に閉じ込められ、いくつもの夜と昼とが天を巡った。  孤独の岩窟の中、雷公は怒りを飲み込み、地は大きく震える。  ある日、ようやく雷公は解放される。  己を閉じ込め、苦痛と孤独の底に落とした男の息子と娘であった。  雷公は感謝の証に、ひとつの瓢箪を渡し──しかるべき時のために撒くようにと兄妹に助言した。  娘、女媧(ジョカ)は彼の地に瓢箪を植え、しかるべき時を待った。  怒れる雷公は、己が仇を討つために、地を水で満たした。女媧は兄と共に瓢箪の中に逃げ、生き延びる。  雷公の怒りは激しく深く、女媧の父の作った世界を押し流し、破壊し尽くした。  後には、瓢箪に守られた女媧と兄伏羲(フッキ)が残された。    彼の地に山河あり。  雷公去りし土地に女媧の子は国を拓く。  故に、天籟(ティエンライ)国の民たる我らの上に天あり。  天籟は神意を受け、天に守られる。  女媧は天籟を守る。天は天籟と共にある。
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