頼れる!? 先輩、パルフェ・ショコラータ

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頼れる!? 先輩、パルフェ・ショコラータ

「にゃっはっは……初〜っ端から格好悪いとこみせちゃったにぇ〜」 「あはは……なにはともあれ、よろしくお願いしますね、先輩」 「ふぉおお! ふぉおおお! もっかい! も〜っかい! 呼んで? 呼んでみ!? ね? ほら、先輩って!!」 「……せ、先輩?」 「むっはー! たまんねっす! 何その上目遣いで『先輩?』わはぁああ! 男殺しっす! 萌え死ぬっす! たっまんねええ!」  ……大丈夫かこいつ? (いや、私に言われても……。ゲームでは主役をずっと支え続けてくれた良い先輩……としか)  描写しちゃ駄目な部類だったんだろうな。 (そうね……) 「あー! はー……はーぅぶぇっふ、えっふ! ふぅ、いやなんかゴメンねぇ。  うち1年の頃からずっと一人ぼっちだったっすから、テンションが変になっちゃって」 「あ、そうなんですね」  そうなんか。 「改めて自己紹介。私は皇都に住むショコラータ男爵家が次女、パルフェっす」 「辺境の地の代官を務めさせて頂いております、クロード男爵家が長女、フローレンシアです。フローラとお呼びください」 「じゃあ、フローラちゃんっすね」  軽っ……。 (確かにね……) 「いやーこんな感じで申し訳ないっす。うちは兄貴が5人居てまして、しかもお仕えする子爵家様及び伯爵家様方がすぐ近くにいらっしゃいますんで、兄貴達もなんと言うか子分っつーか、下っ端っつーか。そんな感じの喋り方してたもんっすから移っちゃいまして……」  えへへと頬をかくパルフェ嬢は、ベリーショートのボーイッシュかつスレンダーな小動物系女子であった。 (いやし系ってやつよねぇ……って、あんたなんでスレンダーってわかんのよ!? 見えてないんじゃないの!?)  資料があるからだが? (何の!?)  花ラプの設定資料集ですがなにか? 今日び資料集位、いくらでもネットで調べられるじゃん。 (え!? ネット使えんのあんた!?)  今までSNS上の話とかしてやってただろうが。今更過ぎんだろ。駄目な喪女さんねぇ。  ってか、お前すごい顔してるから怯えられてるぞ? (あ゛……) 「あ、あ、あの、うち、な、何かまずいことしたか口にしたっすか……?」 「あ、あははー、ああ、いえ、ちょ〜っと忘れ物したかもしれない……って思って。おほほほほほほほ……」 「なーんだ、そーだったっすかぁ。フローラちゃん、見かけによらず割とドジっ子っすねー」 「え、えへへー?」  うまい返しだったな。そうは全然思ってないからお世辞だけど。あと可愛くない。主に中身が。 (っさいわぼけえ! ちっとは色々オブラート包めや!) 「にしても久しぶりに寮監の機嫌の良さそうな顔見たっすねー」  そうなの!? (そうなの!?) 「あの……、あれで機嫌良さそう、だったんですか?」 「あー、うちが怒られてたからそうは見えなかったっすかね? でもいつもなら有無を言わさず、寮の周りを50周走らされてるところっすよ。それがなかっただけでも相当機嫌が良いことがわかるっす」  そうなんだ…… (右に同じくそうなんだ……) 「寮監さんと知り合いだったっすか?」 「ああいえ、直接知り合ってたわけではなく……。母が学院生時代に同室だったらしいのです」 「え!? お母様ってば伯爵家令嬢だったっすか!?」 「いえ、当時は母もパーリントン夫人も子爵家令嬢だったそうです。パーリントン夫人は伯爵家に輿入れして、母は当時男爵になったばかりの父に。そうでなければ男爵家に嫁に出してもらえなかったかと……」 「っすねぇ。家格の上への輿入れはともかく、相手が家格がかなり下だったり家臣だったりしたら、できなくはなかったっしょうけど、うるさかったっしょね。家格が離れると、家のもんだけでなく周りが騒ぐ所もあるっすよねぇ」 「当時、騎士爵だった父は母のハトラー子爵家に仕えてまして、お祖父様の留守中侵攻してきた敵国の手より領地を守り抜いた功績で男爵となりました。父と母との仲も良かったので、お祖父様は男爵となった父との結婚を認めたのだとか。」 「おおおお!? ハトラー子爵……あいや、伯爵とな! お隣だったんスね! お祖父様のお噂はかねがねっすよ!  それにしても危機を救った令嬢との恋なんて……ロマンっすねー!」  もうそれだけで物語が成立しそうだよな。 (本当にね。しかも続きがあるんだものねぇ) 「結婚の話があと半年遅かったら、別の功績で伯爵に叙爵したお祖父様に認めてもらえてたかどうか……」 「おおう、燃え上がるようななロマンスかと思いきや、割とギリギリ滑り込みセーフってやつだったんっすね……」  言葉にしてしまうとチープだけど、本当にそうだな。  ってか、喪女さん喪女さん、 (誰が喪女よ! そして何よ!?)  身の上話も良いけど情報収集しとかなくて良いの? (あー……それもそうね) 「先輩っ。あの、聞いておきたいことがあるんですがぁ……」 「むひょー! 何っすか、何っすか! 何でも聞いちゃってくれていいっすよー!」 「この学院で気をつけて置かなければいけないことって何でしょうか?」 「気をつけることっすかぁ? うーん……あんまり上位貴族に絡まない・絡まれないことっすかねぇ?」  普通だな。 (普通ね。でも本題は……) 「もし絡まれたりしたら?」 「精一杯作り笑顔で切り抜けて逃げる!」  それができりゃ苦労しねえなー。 (だよねー。知りたいのはそうじゃないもの) 「え、えっと……それもできなかったら?」 「ま、誰かがパーリントン夫人に伝えてくれるっす。恐らくそれで万事オッケーっす」 「え? そうなんですか? パーリントン夫人ってそんな力があるんですか?」 「皇家の王子様も通うこの学院の不文律の一つに、寮監には絶大な権力をってのがあるんスよ。  寮を預かる寮監が、皇家の子息子女に物言えぬイエスマンじゃ、何かあった時大変っすからね。  大体嫡男でもない限り、その他の子息子女なんてのは貴族であるようで貴族ではないっすから、偉くも何でもないんっすよ。分家を作る程の権勢を誇る家ならともかく。  そりゃ家のものが害されりゃ親は怒るでしょうけどね。ただ理由は、血が繋がってるから家族として大事にしてるって所もあれば、事件に利用価値があるってだけの理由でこれ幸いと喧嘩ふっかける奴らも居るっす。  帝国の法に照らすと、明確に当主のほうが扱いは上なんっすけどねぇ。  話を戻しますが、パーリントン家はゴルドマン家……あー、ゴルドマン家は古い時代から多方面へ顔の広い家柄なんっすが、そことも縁が深いんっすよね」 「縁戚の強い家ですか……。ですが、そこの令嬢も確か新入生に居るんですよね? 仮にその方と問題が起きたり、伯爵家より上の方々とのトラブルまでどうにかなるものなのですか?」 「ゴルドマン家が本家扱いみたいっすけど、どっちかと言うと貴族連合みたいな家柄っすので、全体主義的なところがあるんすよ。なのでパーリントン夫人が否を唱えれば、ゴルドマン家の令嬢さんがなんと言おうと、身分も含めて権限は下っす。当主に何かあった時、代行権限を持つのは夫人っすから。そしてかの令嬢は当然当主ではないっすから、あくまで貴族の娘扱いっす。  また皇家の方々も、最大規模の派閥である貴族連合を相手に無茶はなさらないと思うっすよ? 侯爵家および公爵家の皆様方も言わずもがなっす」 「なるほど。とてもためになるお話ありがとうございました。ありがとうございます先輩! これからも頼りにさせてくださいね!」 「にゃっ! ……ぅぇへへへ。これくらいなんてことないっすよぉ」  んまぁ……コミュ障だったわりには取り入るのがうまいな。 (別にコミュ障だったわけじゃないわよ。同性の見えにくい悪意がダメなのと、男の人が苦手……ってか、良くわかんなかっただけよ)  友達居なかったくせに。 (ぬぐっ……。趣味を理解してくれる同年代が居なかっただけだわ)  オタクだもんねぇ。 (こいつ……うっさいわぁ…… ) 「あっ! 大事なこと忘れてた」  こんな思い出し方するくらいだから大事なことだよな。 (そうね) 「大事なこと、とは?」 「フローラちゃんの学年に、一人だけ気をつけるべき相手が居るっすよ」 「気をつけるべき相手ですか。どんな方なんです? 家格の高い人なんでしょうか?」 「家格の高い人とは夜会でもない限り、早々絡むことはないっす。学院内でもある程度住み分けがあるっすし。  気をつけるべき相手が問題になるのは、家格が同格であることっす。ただし、圧倒的に相手が目上であるってのが厄介なんス。家格は同じにして確実に格上、そんな人が居るっすよ。イルジオラ男爵家当主その人、マリオ・イルジオラその人っす」 (男爵家当主……)  なるほど格上だな。ただの子息子女ではない、れっきとした爵位持ちだものな。 「気を……つけますね。ありがとうございます先輩」
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