1.よくあるはなし

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玄関の棚の上、鍵入れの中の少し古いキーホルダーは二人のイニシャルのRを模したもの。 チャームの部分が欠けてしまってもう使ってないけど、大切な思い出の品だから捨てられなくて、ずっとそこに置いてある。 湯川理子(ゆかわりこ)、24歳。 「い」 「ん?」 「言っておきますけど」 「うん」 「私、結城さんみたいに女の子取っかえ引っかえする男の人嫌いです」 生まれて初めて誰かに、面と向かって嫌いと言った。 「取っかえ引っかえ?」 この期に及んでしらばっくれるつもりだろうか、この男。 「結城さんの部屋、出入りする女の人ころころ変わるし、たまにその、声とか聞こえるし」 物音とかね。 「聞こえてたんだ?」 私の言葉に、焦るどころか口の端をあげて笑う悪い顔。嗚呼、なんでこんなにドキドキするんだろう。腹が立つ。 「ーーでも、そういうの全部やめるよ」 気のせいか、隣人結城の視線がRのキーホルダーに向いてる気がする。 「湯川さんが浮気男のリョウクンと別れるなら」
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