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玄関の棚の上、鍵入れの中の少し古いキーホルダーは二人のイニシャルのRを模したもの。
チャームの部分が欠けてしまってもう使ってないけど、大切な思い出の品だから捨てられなくて、ずっとそこに置いてある。
湯川理子、24歳。
「い」
「ん?」
「言っておきますけど」
「うん」
「私、結城さんみたいに女の子取っかえ引っかえする男の人嫌いです」
生まれて初めて誰かに、面と向かって嫌いと言った。
「取っかえ引っかえ?」
この期に及んでしらばっくれるつもりだろうか、この男。
「結城さんの部屋、出入りする女の人ころころ変わるし、たまにその、声とか聞こえるし」
物音とかね。
「聞こえてたんだ?」
私の言葉に、焦るどころか口の端をあげて笑う悪い顔。嗚呼、なんでこんなにドキドキするんだろう。腹が立つ。
「ーーでも、そういうの全部やめるよ」
気のせいか、隣人結城の視線がRのキーホルダーに向いてる気がする。
「湯川さんが浮気男のリョウクンと別れるなら」
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