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【ピンポーン】
「ーー!」
突然のインターホンに体が跳ねた。寿命が縮まるかと思った。いやそれは言い過ぎだけど。
心臓をバクバクさせながら起き上がると、軽く身なりを整えて、そうっと玄関に向かう。かなりの既視感。まさかまたあいつがーーなんて思いながら覗き穴を見ると、そこに立っていたのは涼くんだった。
扉を開けるとシュンとした表情の涼くんと目が合う。
「……涼くん」
「どうしても会いたくて、来ちゃった」
そんなベタなセリフを吐きながら、怒られた子供みたいな顔をする涼くんがおかしくて、自然と笑みがこぼれた。それを見た涼くんが少しだけホッとしたような顔をして、中に入っていい?と問う。
「どうぞ」
「お邪魔します」
靴を脱いだ涼くんが短い廊下を突き進んで部屋の奥に入る。そして定位置のベッドの側の床にピシッと正座すると申し訳なさそうな顔で私を見上げた。
「……りこちゃん、ほんとにほんとにごめんなさい」
そしていつもと同じ謝罪の言葉を口にする。ほんと、面白い位毎回同じ言葉。他の女の子としちゃってごめんなさい。そんな最低な言葉をほんとに反省してるような顔で口にする。いや、反省はしてるんだろうけど。
それでもまた次。自制できないのが涼くんなのだ。
それが、涼くんという男の子の性。
「りこちゃん別れるなんて言わないで」
「……」
ごめんね涼くん。あんなにブチ切れてた私だけど、涼くん以外の男の人とつい昨日同じことをしてしまったんだ。ほんとにほんとにごめんなさい。
「……あのね涼くん」
「許してくれる?」
「……」
「りこちゃん」
そんな子犬みたいな目で見上げられたら頷いてしまう。それが私の性。私という人間。
自分の罪もまともに白状できない、そんな屑人間だ。
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