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「もう少し待っててね」
涼くんの為に小さめの鍋でココアを作る。
嗚呼それにしても、私はなんて屑人間なんだろう。そう思いながらココアをくるくる掻き混ぜる。甘い匂いが漂うキッチン。そこには似つかわしくないドロドロしたものをお腹に抱えた私が立っている。
「まだー?」
そこに涼くんがやって来て後ろからぎゅっと抱きつく。その体温を、愛しいなあと思う気持ち半分、涼くんはいつもいつも許された気持ちになるの早いよなあと思う気持ち半分。そしてそれらを打ち消す罪悪感の波。
「わ、りこちゃん体熱い。熱あるんじゃない?」
そう言いながらぺたぺたと私の体を触り始める涼くん。子供みたいな探究心で体中触れていくから、くすぐったくて時折声が漏れた。
「ほんと熱いよ。体温計持ってこようか?」
「ううん、平気」
鍋に視線を落としたままそう返すと、涼くんが横から顔を覗き込んできた。
「でも顔も赤いし、熱あるんじゃないかな」
「平気だよ、涼く」
「唇も熱い」
横を向いた拍子にキスされた。
まじで許された気持ちになるの早いよなあ、涼くん。浮気が発覚したすぐ次の日の行動とは到底思えない。呆れてるとか貶してるとかではなくて、凄いなあって。切り替え早いなあって。私もこんな風に生きられたらなあって。
「りこちゃんさ、何してた?」
いつもは年下らしく、可愛い男の子してる涼くん。だけどたまに、鋭い観察眼で私をドキリとさせることがある。涼くんには、嘘もサプライズも成功したことがない。
いつもはほわほわふわふわしてて、明るい涼くんだけど、たまにとても冷静な顔をして核心をついたりする。
それか、ただ単に私が嘘が下手なのか。
「何って……?」
鍋の火を止めたのは涼くんだ。細長い指がしなやかな動作で静かに火を消した。
「今日」
「今日は……寝てたよ」
「俺が来る前は?」
「何で……?」
まじで嘘下手だよな。そんな声が聞こえた気がした。涼くんは軽く口端をあげただけなのに。
「ひとりでしてたのかと思った」
その言葉と同時に、涼くんの手がするりと下着の中に入ってきた。
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