1.よくあるはなし

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「こまります」 扉を開けてすぐ、そうのたまうと。 「なにこれ。あけてよ」 掛けられたドアチェーンを見て不満げに一言。 王様のように凛とした態度で、あけて、と再度口にする隣人の結城。 「結城さん、何の用ですか」 「ここあけてくれないと話せない」 埒が明かない。いらいらする。こんなとこ、万が一涼くんに見られでもしたら、困る。 「わかりました。あけるので下がってください」 私のその言葉に、ドアチェーンに触れていた手を引っ込める結城。 それを見て一度扉を閉める。はあ、とため息を吐いてドアチェーンを外すと、小さく扉をあけた。 そこに、満足げに笑う男がひとり。 「何の用ですか」 「これ」 「ーー!」 「わすれもの」 そう言って掲げられたそれは間違いなく私のーー。 「ぶらじゃー」 「ーー!」 誰かに聞かれでもしたらどうするんだ!?そう思って王様のように凛とした態度の男の口を慌てて塞いだ。
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