0人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「こまります」
扉を開けてすぐ、そうのたまうと。
「なにこれ。あけてよ」
掛けられたドアチェーンを見て不満げに一言。
王様のように凛とした態度で、あけて、と再度口にする隣人の結城。
「結城さん、何の用ですか」
「ここあけてくれないと話せない」
埒が明かない。いらいらする。こんなとこ、万が一涼くんに見られでもしたら、困る。
「わかりました。あけるので下がってください」
私のその言葉に、ドアチェーンに触れていた手を引っ込める結城。
それを見て一度扉を閉める。はあ、とため息を吐いてドアチェーンを外すと、小さく扉をあけた。
そこに、満足げに笑う男がひとり。
「何の用ですか」
「これ」
「ーー!」
「わすれもの」
そう言って掲げられたそれは間違いなく私のーー。
「ぶらじゃー」
「ーー!」
誰かに聞かれでもしたらどうするんだ!?そう思って王様のように凛とした態度の男の口を慌てて塞いだ。
最初のコメントを投稿しよう!