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「何考えてるの」
わなわなと怒り震えながら目の前の男に問う。引っ張りこんだ玄関の中、至近距離で見る顔は癪に障る位綺麗だった。
「何って。ただの親切心」
悪びれもなくそう言ってのける隣人の結城。細い指先で遊ぶ下着を取り上げると、おかしそうに笑う。
「なんか、怒ってる?」
形のいい唇が、上品に弧を描く。
「誰のせいだと」
「俺のせいなの?」
端正な顔がぐっと近づく。真っ白な手が伸びてきて、首元をかすめた。その些細な接触に、体が大げさにびくつく。
「ーー!」
「あ、ごめん。髪にほこりついてた」
「ーー」
言葉にならない羞恥と腹立たしさが同時にこみあげる。そこにときめきに似たなにかも混じっていることにまた腹が立つ。
「ーーで」
「なに」
「彼氏と別れるの」
は、はあ?
「どうすんの」
どうすんのって、なんだ。
「いや、間抜けな顔されても」
は、はああ?
「むかつくんだけど!?」
「あはは」
笑ってる場合か。
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