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「入社時に一応の希望部署アンケートを書かされたんですけど、今回丁度急にその部署に欠員が出来たらしくて。『行けるけど、どうだ?』って……」
「そんなことが金曜にあったんだ」
「僕は、全く異動したいとも思ってませんでしたし、田辺さんの下でずっと働きたくて……これは本心です!」
真っ直ぐな目で見つめられ、直弥は「解ってる」と、大きく頷いた。
「でも、やってみたかった企画部の部署に行けるって言われて……」
「――決めたんだね。その判断は、間違って無いよ。おめでたいことだと思う。良かったな」
「うぅ……有り難うございます。僕、田辺さんが部長の口から聞く前に、ちゃんと自分から言いたくて」
「それで待ち構えてくれてたんだ。うちの企画部は社内外のイベント企画や広報、広告ノベルティ作成やら多岐だから、本当に向いてると思う。頑張って」
「田辺さんんんん~! せっかく教えて頂いたのに、また新しい誰かに一から……仕事で迷惑かけてしまいますし、田辺さんと一緒に仕事がもう出来ないの、寂しくて」
「元々異動の異動で急にここへ来さされたのに、嫌な顔一つせず、仕事を覚えてくれて、こちらこそありがとう。俺も至らない所あったのに、そんな風に言って貰えて、先輩冥利に尽きるよ」
恐縮しきっている後輩に、驚きながらも状況が把握出来た直弥は思いの丈を述べた。
お世辞はない。全て本心だ。前回の異動の状態に比べたら、関係は雲泥の差だ。
性質の良い後輩と別れるのは直弥も寂しいけれど、そんな風に言って貰えて本当に嬉しい。
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