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故郷を出て東京に行った理由を問うと、青年は故郷で暮らすのが難しくなったと答えた。
頼る人も減り、住む場所から逐われつつあるのだと。だから上京せざる終えなかったのだと、青年は悄然とした顔で語った。
時は刻一刻として、自身の故郷や仲間を苛んでいるのだ。
銀ノ介は歯噛みした。まだ買収するには資産が足りない。
だが、そんな弱気になっている場合ではないのだ。株でも家財でも売り払って、金を造りさえすればいい。
そう心に決め、銀ノ介は遠くに見える白い山を見た。
仲間の姿は見えない。
だが、今日も仲間はきっと、人間の足跡に変幻し、あの旅館に向かっているのだろう。
人間にならざるを得なくなった仲間を想いつつ、銀ノ介は雪国の地を後にしたのであった。
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