1. 中森充というクラスメイト

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 でも、そんな不安もクラスの友達と会うと、お天気雨のようにすぐに消えた。わたしはとにかく、今を楽しみたい! そう言う気持ちで自分に押し付けた。  始業式も終わり、先生が来るまでわたしはクラスの友達と当たり前のように過ごしていた。でも、ある話題が穏やかの雰囲気をくもらせた。  「……ねえ、長瀬さん。フラれたらしいよ」  この話をひそひそ声で始めたのは由香子ちゃんだった。この話で一人だけ顔を輝かせていたのは千佳ちゃんだけだった。  「じゃあ、わたしにチャンスが回ってきたのかな……」  千佳ちゃんは他人の不幸は蜜の味――というタイプではない。長瀬さんは同じクラスで教室で顔を見た時に下向き気味だった理由がやっとわかった。どちらかというと大人しい女の子で、勉強もそこそこできる。自分から何かやる性格ではないのに、告白する勇気に、わたしは尊敬している。――わたしにはまだ恋愛についてはよくわからない。子どもの恋愛なんてままごとみたいに、子ども染みてて、大人の真似事をしたいだけだと思っている。だけど、きっと長瀬さんは違ったのだろうな。
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