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2021年、元旦。
ドキドキして眠れないかも……なんて思っていた殊勝な僕は、結局年明けを見届けたところで寝落ちしてしまい、目が覚めたのは八時間の睡眠をしっかり満喫した後だった。
階下から、くぐもった声がいくつも聞こえてくる。
僕は布団を跳ね除け、冷たい空気の中を勢いよく突っ切った。
「おはよ! あけおめ! ことよろ!」
「あ、お兄ちゃん。あけお……」
「年賀状来た!?」
「さっきお父さんが分けてたけど……お兄ちゃんがこんなに早起きするの、珍しいね」
実家住まいなのをいいことに、寝正月を満喫するのが僕の恒例だ。
でもそれは、もう昔の話。
今年の僕は、一味違う。
「まあ、一年の計は元旦にありって言うから……あ、こら! 今からみんなでおせち――…」
母親の声を振り切り、階段を駆け上がる。
手の中には、僕宛ての年賀状の束。
厚みは1センチもないけれど、その中に彼のが入っているかと思うと待ち切れない。
「待ちなさいって! あんた宛に荷物が届いてるのよ」
……えっ?
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