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その会話だけで、自分たちのこれからの行く末が想像できるようだ。銀髪の女は身を震わせた。
だが彼女の懸念とは裏腹に、ほかの女たちからは安堵に似た雰囲気がただよっていた。牢が開いて外に出されようとしていたからだった。
(でも、これから行く先を考えれば、楽観的にはなれないわ――)女は思った。
「おまえたち、名前を確認するぞ」
女たちは次々に名乗らされ、男が手元の書きつけと照合していった。
「おまえは?」
「モーガン」銀髪の女は自分の名前を言い、そして牢を出た。やはり気になって、ちらりと背後を見やる。彼女は、自分のすぐ後ろにいた。
「おまえは?」
「リアナ」牢から出ながら、金髪の女ははっきりと名乗った。
「おっ、こりゃ王妃さまと同じ名前じゃないか? おんなじ金髪だしよ」
「出世する画数よ」女はにこっとした。笑うとなかなか愛嬌があって、かわいらしい顔だちに見える。
「違いねぇ、俺の姪っ子もおんなじ名前でよ」
「それは、べっぴん間違いなしね」
「おうよ」
そして、女性たちは二列に並ばされ、どこか別の場所へと連れられていく。狭く陰鬱な通路が、しだいにごく普通の貴族の屋敷のように見えてきた。地上階に出たのだろう。
「人さらいたちと仲良くしゃべるなんて、どうかしてるわ」
モーガンは、リアナと名乗った女に苦言した。もちろん、気づかれないように小声ではあったが。
「小悪党だろうが同じ竜族よ。愛想よくしとけば隙もできるわ」リアナは肩をすくめた。
「小悪党だなんて……女性をさらって、売ってしまうようなやつらなのよ!」
「そういうヤツらを小悪党って言うんじゃないの? 少なくとも、商品としての扱いはしてくれてるし」
リアナは平然と言い、短いスカートのすそからチーズを取りだして、またかじり、顔をしかめた。「まっず。それに竜のよだれみたいな匂いがする」
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