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「おまえが謝ることじゃない。もともとは俺の計画だ。王の不在も、フィルバートのことも」
「うん……」
どれくらい長いあいだ、デイミオンはこの計画を抱えてきたのだろうか、とリアナは思った。グウィナとハダルクの結婚式の夜、彼はフィルバートにシーズンの話を持ちかけている。その夜のデイミオンは、いつになく不安そうだった……。
「でも、その計画はアーダルを助けるためだわ。そして、フィルとの結婚は、あなたがいないあいだのわたしのために。……デイ、本当にあなただけが、こんな負担に耐えなくちゃいけないの?」
「フィルバートには耐えられて、俺には耐えられないというのか?」デイミオンの声に棘を感じた。
「そんなこと……」
言いながら、リアナは自分が失言をしたことに気がついた。デイミオンは昔から、弱い者のように気づかわれるのが嫌いなのだ。
「少なくとも、この結婚であなたに嫉妬の辛さを味わってほしくない」
「おまえに嫉妬のなにがわかる? 俺にも、あいつにも愛されているくせに」声に怒りが混じっている。
リアナは身体を離して、夫の顔をしっかりと見あげた。
「あなたが繁殖期をほかの女性と過ごすのを、寝台のなかで待っていたことがあったわ。毎日、夜が来なければいいと祈って……。デイ、わたしだって嫉妬するのよ」
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