11-5. 婚前契約

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「今は同じ重さじゃないわ」  リアナはためらいながら言った。 「でも、夫婦(つがい)として過ごせば、愛するようになると思う。フィルに惹かれる気持ちが、どこかにはあるの」  優しいくせに嘘つきで、言葉ではリアナを傷つけても、彼女のためになにを犠牲にすることも(いと)わない。矛盾だらけの英雄で竜殺し。フィルバート・スターバウを愛さないでいるのは、今のリアナには難しかった。   「……わたしの強さを信じてくれるあなたが好きよ、デイミオン。国のこともアーダルのことも、重荷は二人で分けあいたい。だけど不安なの。わたしたちが一年後、どうなるのか」リアナは言った。 「わたしが第二の夫を持つなら、あなたもいずれ繁殖期(シーズン)の務めに戻ることになる。そうやって、長い時間をかけて少しずつ関係が変わっていく。グウィナとハダルクみたいに……。フィルのことは大切よ。でも、それが怖い」 「……。……」  デイミオンが苦しみ、決断に悩んでいることが伝わってきた。あの〈血の呼ばい〉があったころとは違うが、お互いの考えが手に取るようにわかる瞬間が、二人にはある。そうだとしても、夫は自分の決断を(くつがえ)すことはしないだろうということもわかっていた。フィルバートと同じように、あらゆる苦難を予想しても、やるべきことはやりとげるのがデイミオン・エクハリトスだった。あまり似ていない兄弟の、数少ない共通点かもしれない。
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