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「今は同じ重さじゃないわ」
リアナはためらいながら言った。
「でも、夫婦として過ごせば、愛するようになると思う。フィルに惹かれる気持ちが、どこかにはあるの」
優しいくせに嘘つきで、言葉ではリアナを傷つけても、彼女のためになにを犠牲にすることも厭わない。矛盾だらけの英雄で竜殺し。フィルバート・スターバウを愛さないでいるのは、今のリアナには難しかった。
「……わたしの強さを信じてくれるあなたが好きよ、デイミオン。国のこともアーダルのことも、重荷は二人で分けあいたい。だけど不安なの。わたしたちが一年後、どうなるのか」リアナは言った。
「わたしが第二の夫を持つなら、あなたもいずれ繁殖期の務めに戻ることになる。そうやって、長い時間をかけて少しずつ関係が変わっていく。グウィナとハダルクみたいに……。フィルのことは大切よ。でも、それが怖い」
「……。……」
デイミオンが苦しみ、決断に悩んでいることが伝わってきた。あの〈血の呼ばい〉があったころとは違うが、お互いの考えが手に取るようにわかる瞬間が、二人にはある。そうだとしても、夫は自分の決断を覆すことはしないだろうということもわかっていた。フィルバートと同じように、あらゆる苦難を予想しても、やるべきことはやりとげるのがデイミオン・エクハリトスだった。あまり似ていない兄弟の、数少ない共通点かもしれない。
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