11-6. 〈血の呼ばい〉の行方

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11-6. 〈血の呼ばい〉の行方

 廃嫡(はいちゃく)の手続きが行われた日は、よく晴れて暖かかった。ミモザが金色の花をほこほこと咲かせ、甘い香りを周囲にふりまいて、高貴な者たちの一行は遠目には野掛け(ピクニック)にでも出かけるように見えただろう。  王太子ナイメリオンは竜騎手団の聴取に応じ、廃嫡についてもすなおに受けいれた。王配リアナの評判が落ちれば、王がもっと自分を頼り、重んじてくれると思ったと動機を語ったらしい。気に食わない相手の評判を落とすつもりの浅慮な挙動が、王都を揺るがすほどの騒動につながったことがようやく理解でき、深く反省しているようだと世話役の竜騎手が報告した。  犯罪組織に金を提供したことと、無自覚にではあるが王配の動きを組織側に流していたこと。どちらもオンブリアでは死を持って償うべき重罪になるが、未成年であるため処分は廃嫡のみとなった。重罪を与えにくい背景には、高位貴族たちの親族関係が強いことや、それぞれの竜種のライダーたちに産業的・軍事的に依存している事情もある。成人を迎えても当面、公職に就くことはできないだろうが、更生の機会は十分にあるだろう。  一方で、感じやすい年頃のナイムを()きつけて行動を指示していたのが、人身売買にかかわりのある例の貴族の一人だった。こちらの罪はより悪質で、死罪は(まぬが)れないだろうと噂されていた。
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