11-6. 〈血の呼ばい〉の行方

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 〈御座所(おわすところ)〉までの護衛は、兄のヴィクトリオンがつとめた。エンガス卿をのぞき、先日の五公会と同じ顔ぶれが同行した。儀式の見届け役ともいえるし、あらたな王太子になりうる血筋の者たちでもある。もはや後継者にはなりえない、高齢のエンガス卿が同行しないのはそのせいでもあるらしかった。  リアナが〈御座所〉を訪れるのはひさしぶりだった。一番最初にこの場所に来たのは、まだ彼女が王太子の身分のころだった。いまのナイムと違うのは、そのころすでに王は亡く、〈血の呼ばい〉の上では彼女はすでに王で、デイミオンがその後継者だったということだろうか。 「王権の辞退や譲位には、しかるべき手続きが必要だ」と、かつてそのデイミオンが言っていた。そして、「能力のない竜王が退位したことについては前例もある」とも。あとになって、その王が、彼とフィルの母レヘリーンだと知った。  竜たちの国に王家はなく、〈血の呼ばい〉によって後継者が決まる。それぞれが王になりうる血筋の五公十家が大きな力を持っており、資質のない者が王となることは彼らが許さない。 (では、〈血の呼ばい〉の意義は、いったいなんだと言うの?)  儀式を待つあいだ、リアナはつれづれにそんなことを考えていた。
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