11-6. 〈血の呼ばい〉の行方

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「そう……」  それは親としては誤った愛だとリアナは思う。砂糖菓子を与えて鳥かごに飼うような惰弱な愛だ。それでも、その情愛がナイムの救いになったことも確かなのだろうと思うと、ゲーリー卿ばかりを責める気にはなれなかった。  たしかにナイメリオンには、次代の王として過大な期待と負荷がかかっていたには違いないのだろう。  ヴィクはつづけた。 「ナイムは、ハダルク卿(とうさん)やデイミオンに憧れてて……でも、そういう強くて立派な生き方ができるやつばっかりじゃないんだ。たぶん、あいつは早く一人前になろうと焦って、間違った方向に行ってしまったんだと思う」  その言葉に対して、リアナは是とも非とも言えなかった。憧れと言われた当のデイミオンは渋い顔をしている。 「……それで、おまえはどうするつもりなんだ?」デイミオンが尋ねた。  ヴィクトリオンは母譲りのアイスブルーの目で、竜車の窓から遠くを見はるかした。 「俺、ナイムを連れて大陸を旅してまわろうと思ってるんだ。今のタマリスはあいつには居づらいし、それに、ずっと王城でしか生活してなかっただろ?」 「そうか」デイミオンは反対しなかった。「許可を出すように通達しておこう」
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