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「いい子ね、ヴィク」
リアナは、自分よりもずいぶん背が伸びた少年をハグしてやった。
「だけど、あなたはそれでいいの? 剣士の修行をしたかったんでしょう? ナイムと一緒に行けば、修行にはまわり道になる。〈ハートレス〉だからといって、あなたの人生をナイムの犠牲にしてほしくはないわ」
自己犠牲と言えるほど献身的な〈ハートレス〉の生きざまを間近に見ているリアナには、それが心配だった。
「いいや」
面映ゆそうにハグを受けるヴィクは、力強く言った。
「まわり道でも犠牲でもないよ。俺がそうしたいから、そうするんだ。……たぶん俺はそのために、これまで剣の稽古をしてきたんだよ」
その確信に満ちた言葉に、リアナはヴィクの成長と、兄弟の絆を感じた。ヴィクの優しさや力強さが、きっとナイムに良い影響を与えるだろう。
掬星城が、そろそろ間近に姿をあらわした。
ヴィクとナイムの冒険に満ちた旅は、のちに王都で戯曲となって上映されるほどの物語を生んだが、それはまた別の話である。
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