11-6. 〈血の呼ばい〉の行方

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 ふーん、なるほど、とザシャは無感動に思った。警備隊への推薦もふくめ、タマリスでは世話をしてもらった自覚はあったが、やはり亡父の知り合いだったらしい。 「こんな立派な牢をあてがってもらったのも、死んだ親父のおかげですか?」ザシャがうすら笑いを浮かべて言った。「貴族牢っていうんでしょ、こういうの?」 「そうです」ハダルクは首肯し、続けた。 「手短におつたえしましょう。領主貴族――というより、竜を制御できる〈乗り手(ライダー)〉を多く輩出する家は、希少です。あなたには名家の一員として、汚名を(そそ)ぐ機会がある」 「なるほど。それが、こんなとこまでわざわざいらした理由ってわけだ」ザシャは興味をひかれたように尋ねた。「……で、どんな?」 「あなたの血を残すことです」  ハダルクは青い目でじっとザシャを見据えながら言った。さすがに歴戦のライダーだけあって、感情の揺れはまったく見られなかった。 「同じような立場の女性とのあいだで繁殖をしていただく。その(つと)めを受け入れられるのであれば、あなたは命をながらえます」 「そんなことじゃないかと思った」  ザシャは嘲笑った。「繁殖、繁殖。高貴な方々の目的はいつもそれだ」
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