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大きな扉が音をたてて開くと、まるで音と光の洪水のようだった。
地下に囚われ、出されたばかりの女たちは、こわごわと寄り集まって扉の向こう側をのぞいた。
「おまえたちはこっちだ、こっち」
世話役の男が声をあげて、舞台端のような場所に追い立てられる。
そう、それは確かに、大きな舞台のような場所に見えた。エメラルドグリーンの石で飾られた舞踏用の広間だ。高価な蝋燭がおしげもなく使われ、シャンデリアがきらめいて、暗闇に慣れた目には光の海のようだった。
実際には貴族の館の一室を改築した小広間で、王城のものとは比較にならないのだろうが、それでもすり鉢状にしつらえられ満員となった客席は、女性たちに威圧感と恐怖を与えるものだった。
カーン、と小気味よい木づちの音があたりに響く。鳴らした男がオークショナー役だろう。
はじまった競りに、モーガンは思わず息をのんだ。
一人の紳士が、隣の使用人になにかをささやき、そして使用人が札をそっと差しだす。
カーン。また、木づちの音。「共通金貨200にて、落札です」
その小さな声は、湖に落ちた小石のようにあたりを静まり返らせた。「番号をお願いいたします、閣下」
使用人が札を掲げ、オークショナーがうなずく。「ありがとうございます、S卿。
――次なる宝石はこちら。艶やかな黒髪に黒曜石のごとき瞳、性格は穏やかで従順。間違いなく、閣下がたの夜にすばらしい色を添えることと存じます……」
(なんということなの、こうやって、混血の女性たちが人身売買にかけられている)
あらかじめそれを予想していたとはいえ、モーガンは驚きを隠しきれないでいる。人間の国では、女性の地位が男性よりも低い。そう考えられている。だが、竜の国オンブリアでは女性は男性と同じように重んじられ、平等に扱われている――さすがにそのお題目をそのまま信じているわけではなかったが、目の前の光景は衝撃的だった。
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