【 最終話: お年玉¥ラプソディ♪ 】

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【 最終話: お年玉¥ラプソディ♪ 】

 俺は、この1年間ずっと怒ることを我慢していたが、遂に新聞を読むふりをしている父に怒った! 「おい、親父!! これはどういうことだよ!!」 「……」  父は何も答えない。  俺は益々苛立(いらだ)つ。 「おい、親父!! 無職のくせに、何のんきに新聞なんか読んでんだよ!!」 「……」  父はなおも答えない。  俺は、父の読んでいる新聞を鷲掴(わしづか)みにし、テーブルの上にそれを叩きつけた。 『グシャッ!! バシッ!!』 「新聞なんか読んでないで、働け!!」 「だ、だから、そうしようと……」  そう言う父の視線の先には、テーブルの上の新聞があった。  俺がその新聞に目を落とすと、そこには……、  『』、『』の文字が虚しく並んでいた……。  そう、父が新聞を真剣に読んでいたのは、求人欄で『職』を探していたからだ……。  俺は、負けた……。  俺の考えたお年玉金額UP理論は、(もろ)くも崩れ去った……。  そう……。俺は、コロナで父がリストラされるリスクや、父の収入が『0』になるリスクを、この計算ロジックの中に埋め込んでいなかったのだ……。  それに気付いた瞬間、リビングの床に、力なく膝から崩れ落ちた。 「終わった……。何もかも、終わった……。俺のこの1年間の苦労が全て無駄になった……」  すると、父は新聞の求人欄を指差してこう言う。 「あっ、この新聞に載っている警備員のバイト、お父さんと一緒にやってみないか……?」  俺は、一瞬、父を(にら)みつけだが、父の(おび)える顔を見て、すぐに気持ちが吹っ切れた。 「ふふっ……。ああ、いいよ。その代わり、高校だけは卒業させてくれ……」  そう言うのが精一杯だった。  父も母も辛いはず。  そう思うと、これ以上父と母を責めることができなかった。  俺の1年間に及ぶ『お年玉』金額UPの目論見は、見事にはずれた……。  俺の大好きな愛しの『ハニーちゃん』との夢のデートは、まだ当分、先になりそうだ……。  そう思いながら、父からもらったその『お年玉袋』を、そっと胸ポケットに仕舞った。  リビングを出て自分の部屋に戻ると、(おもむろ)にベッドにダイブし、布団を被りながら、こう叫んだ……。 「ハニーちゃーーーーーーんっ!!」と……。 『お年玉¥ラプソディ♪……』 END
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