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5月のプレゼント
いつもの4人組、いつもの学食。だけど話題はいつもと違った。
「やばいよな、隕石」
明日、大学の近所に隕石が落ちてくるかもしれないという臨時ニュースで校内は持ちきりだった。突然観測された隕石のニュースが入ったのは、小一時間ほど前。避難指示が出るのか、本当に落ちてくるのか、現実感のないニュースに皆がソワソワしている。
「明日誕生日なのに、観測史上最大の隕石で生命の危機なんて」
ショウタの言葉に、私は肩をがっくり落として賛同した。
「メイってある意味、本当に引きが強いよね」
隕石なんて気にしていない素振りを見せながら、ミキが笑う。
ミキは高校からの同級生、ショウタは文学部の友人、そして先ほどから難しい顔でスマホと睨めっこしているのが工学部のレンだ。
レンは黒髪黒目で私とほとんど同じなのに、異国情緒を感じさせるミステリアスな男性で、私はレンに好意を抱いていた。そういえば、レンとはどうやって知り合ったんだっけ。
「レンは難しい顔してどうしたの?」
ミキの問いかけに、レンが顔を上げこちらを見る。
「サプライズでプレゼントを用意していたんだが、配送中にバレてしまった。それに彼女には少し大きすぎたみたいなんだ」
プレゼントという言葉に反応してしまったが、私は初耳だし、別の人への贈り物だろう。正直知りたくなかった。
「何買ったの?」
「告白には指輪と聞いたから、指輪のために石を用意していた。折角だから大きいものを注文していたんだ」
「告白で大きい宝石の指輪は重くない?プロポーズみたい」
ねえメイ、とミキが視線を送ってくる。
「・・・うん、そうだね、誕生石のピアスくらいの方がいいかも」
私がミキの言葉に同意すると、レンは弾かれたようにこちらを見て、すぐに立ち上がった。
「悪い、急用ができたから帰る」
「隕石が来たら意味ないぞ〜」
ショウタの言葉に、なぜかレンははっきりと答えた。
「隕石は来ないよ」
レンは席を離れると、スマホでどこかに電話していたが、隕石の話題で騒がしい学食では離れたレンの言葉は聞こえなかった。
翌日、私はレンから緑色の輝石のついたピアスを告白の言葉とともに受け取った。私の何気ない一言がこんな嬉しい結果になるなんて。
ところで隕石はというと、レンが学食から去った後、突然進路を変え地球に落ちてくることはなかったのであった。
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