その1:最後の授業

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 誰かが拍手の先陣を切る前に、それまで寝ていた中山が怒鳴りながら立ち上がったからだ。  彼は、怒りを宿した瞳で教師をにらみつける。 「悪いことしちゃいけねーってのはわかったぜ。だがなあ、すでに悪いことをされた場合はどうすりゃいい?」 「なに? 中山、お前…」  教師が何かを言いかける。  しかしその言葉は、憎しみをはらんだ中山の声によってかき消された。 「ヘラヘラ笑って受け入れりゃいいってのか? そうすりゃ救われるとでも? 冗談じゃねえ!」  彼は左手で机を殴りつけると、教師に要求する。 「先生はいろいろ知ってんだよな? だったら教えてくれ!」 「…何が知りたい?」  教師の顔から戸惑いが消えた。真剣に向き合うことを決めたようだ。  これを受け、中山は要求の内容を口にする。 「なんで人を殺しちゃいけねーんだ?」 「それは…」 「さっきと同じ答えはなしだぜ! 殺しに限定して教えてくれ! そうすりゃあ…オレも思い留まれるかもしれねえ」 「…わかった」  中山は誰かを殺したがっている。  快楽殺人などではなく、自分の人生を守るためにそうしようとしている。
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