1人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
誰かが拍手の先陣を切る前に、それまで寝ていた中山が怒鳴りながら立ち上がったからだ。
彼は、怒りを宿した瞳で教師をにらみつける。
「悪いことしちゃいけねーってのはわかったぜ。だがなあ、すでに悪いことをされた場合はどうすりゃいい?」
「なに? 中山、お前…」
教師が何かを言いかける。
しかしその言葉は、憎しみをはらんだ中山の声によってかき消された。
「ヘラヘラ笑って受け入れりゃいいってのか? そうすりゃ救われるとでも? 冗談じゃねえ!」
彼は左手で机を殴りつけると、教師に要求する。
「先生はいろいろ知ってんだよな? だったら教えてくれ!」
「…何が知りたい?」
教師の顔から戸惑いが消えた。真剣に向き合うことを決めたようだ。
これを受け、中山は要求の内容を口にする。
「なんで人を殺しちゃいけねーんだ?」
「それは…」
「さっきと同じ答えはなしだぜ! 殺しに限定して教えてくれ! そうすりゃあ…オレも思い留まれるかもしれねえ」
「…わかった」
中山は誰かを殺したがっている。
快楽殺人などではなく、自分の人生を守るためにそうしようとしている。
最初のコメントを投稿しよう!