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教師はそれを、真摯な殺意とも言うべきものを感じ取った。
生徒が殺人犯になってしまうかどうかの瀬戸際である。教師は覚悟を決めた表情で、重々しく口を開いた。
「なぜ、人を殺してはいけないのか。それは…」
「それは!?」
早く答えを言えと、中山は前のめりになる。
教師はまぶたを閉じ、ひと呼吸おいてから開いた。
その顔が笑みに歪む。
「これだ」
言い終わるが早いか、何やら丸いものが教師の近くから飛び上がった。
それはくるくると回りながら床に落下し、重い音を立てる。
次に、丸いものが飛び上がったあたりから赤い噴水が湧き出した。
「…!?」
怒りと憎しみに燃えていた中山の顔から、血の気が引く。
その時、生徒の誰かが絶叫した。
「きゃあああああああああッ!」
これを合図に教室は騒然となる。
「なっ、ななっ、なに?」
「ウソだろ、おい!」
飛び上がったものとは何か。
赤い噴水とは何なのか。
生徒たちはすぐに理解した。
「これが答えだよ、中山」
教師は歪んだ笑みを崩さない。
赤い噴水を浴びたことで、全身がその色に染まっている。
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