その1:最後の授業

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 教師はそれを、真摯な殺意とも言うべきものを感じ取った。  生徒が殺人犯になってしまうかどうかの瀬戸際である。教師は覚悟を決めた表情で、重々しく口を開いた。 「なぜ、人を殺してはいけないのか。それは…」 「それは!?」  早く答えを言えと、中山は前のめりになる。  教師はまぶたを閉じ、ひと呼吸おいてから開いた。  その顔が笑みに歪む。 「これだ」  言い終わるが早いか、何やら丸いものが教師の近くから飛び上がった。  それはくるくると回りながら床に落下し、重い音を立てる。  次に、丸いものが飛び上がったあたりから赤い噴水が湧き出した。 「…!?」  怒りと憎しみに燃えていた中山の顔から、血の気が引く。  その時、生徒の誰かが絶叫した。 「きゃあああああああああッ!」  これを合図に教室は騒然となる。 「なっ、ななっ、なに?」 「ウソだろ、おい!」  飛び上がったものとは何か。  赤い噴水とは何なのか。  生徒たちはすぐに理解した。 「これが答えだよ、中山」  教師は歪んだ笑みを崩さない。  赤い噴水を浴びたことで、全身がその色に染まっている。
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