その1:最後の授業

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 穏やかに呼びかけられて、中山は我に返る。  ふと見ると、教師が不思議そうな顔でこちらを見ていた。 「…あれ?」  中山は教室を見回す。  どうやら椅子から立ち上がっているらしく、視点が高い。 「……」  床に顔を向けてみる。しかし何もない。  先ほど頭を失い血液を噴出させていたはずの三上は、教師と同じ表情でこちらを見ている。 「なんだ…? なんで?」 「おいおい、どうしたんだ」  教師が苦笑する。 「いきなり立ち上がったかと思えばボーッとして…悪い夢でも見たのか?」 「え…?」  中山は呆然とした表情で声を漏らす。  あまりに間の抜けたその姿を見て、教室中の生徒が笑った。 「あはははっ」 「…くっ」  笑われた上、立ったままでいるのが恥ずかしくなり、中山は椅子に座る。  机に突っ伏して、自分が見た阿鼻叫喚が一体何だったのか考えた。  しかし答えが出る前に、教師が話を終わらせる。 「じゃあ、先生の話はこれで終わりだ。気をつけて帰れよ、卒業おめでとう!」 「……」
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