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中山は顔を上げた。視野に赤さを感じてそちらを見ると、窓の向こうで空が赤く染まっていた。
教室内に目を向ける。他の生徒たちが帰っていくのが見える。彼らひとりひとりに向かって、教師が祝いの言葉をかけながら肩を叩いていた。
残っていても仕方がないと、中山も立ち上がる。
帰ろうとすると、教師が近づいてきた。
自分にも祝いの言葉をかけてくるのかと思いきや、低い声で問われる。
「なぜ人を殺してはいけないか、わかってもらえたかな?」
「……!」
中山の顔が真っ青になる。思わず教師の顔を凝視した。
だがそこに、冷酷な殺人者はいない。
「何かあったら相談してくれよ。卒業おめでとう」
にこやかで穏やかな、壮年の教育者だけがいた。
>『その2:赤い空の下で』へ
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