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その2:赤い空の下で
空の藍色と雲の灰色が、陽の赤へと塗り替えられる。
それは校舎も例外ではなかった。
陽の赤は力強い。
物悲しさなど、微塵も感じさせない。
「お、おつかれさまでした」
恰幅のいい中年の男が、校舎から出てきた教師におそるおそる声をかける。
教師は男に向かって笑顔を見せた。
「ああどうも。無事に終わりましたよ」
「ほんとですか」
男は思わずそう言ってから、あわてて弁解する。
「あ、いや…疑ってるわけではないんです。ただその」
「気にしないでください」
教師は笑顔を消すことなく言うと、校舎を見やった。
「生徒たちは、ひとりの例外もなく卒業しました。もう、校舎に入った人を殺したり、幻覚を見せて狂わせたりするようなことはありません」
「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか…あっ」
言うだけではだめだと、男はジャンパーのポケットから封筒を取り出す。
それを教師に差し出した。
「先生、これは今回の…」
「ありがとうございます」
今度は教師が礼を言い、封筒を受け取る。
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