その2:赤い空の下で

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 地主に先生と呼ばれた直親が、苦笑しながら封筒を返す。  その動きがあまりに自然だったので、地主は思わず受け取ってしまった。  後からそれに気づき、再び直親に封筒を差し出す。 「いやいや先生」  地主は、直親を教師役としてではなく敬意をもってそう呼んだ。 「ただの老人がお祓いなんてできるわけないじゃないですか。私が先生を呼ぶ理由もなくなる」 「それはそうですが…どうにも、くすぐったく感じてしまいます」  直親は照れくさそうに、短く刈り込まれた白髪頭をかく。  この行動、反論としてはほとんど効果がない。地主が引き下がることはなかった。 「あの学校は、夜明け前になるといつも紫色の不気味な光を放つんです。でも今朝はそれがなかった。間違いなく先生のおかげです…受け取っていただけなければ、私の寝覚めが悪くなる」 「ですが、あまり多くのお金を持つと霊だけでなく人も寄ってきます。そうなると寄ってきた人に危険が及ぶことに…あ、ではこうしましよう」  直親は封筒を指差すと、こんなことを提案する。 「1万円だけいただけますか」 「1万? それだけでいいんですか?」
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