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かと思うと、クイズ番組の司会者よろしくぴしゃりと指を差した。
「…正解!」
「認めんのかよ」
教室は笑いの渦に包まれる。教師も手を下ろしつつ、生徒たちと一緒になって笑った。
ひとしきり笑って場が落ち着くと、教師は一度咳払いをした。にこやかな表情のまま、生徒たちに向けて語り始める。
「出会いがあれば別れもある…逆に、別れがあれば出会いもある。君たちが卒業する今日は別れの日ではあるが、新たな出会いへ一歩踏み出す日でもある」
「……」
別れという言葉が心を刺激したのか、生徒たちの表情が神妙なものに変わった。笑みを浮かべているのは、語り続ける教師ひとりになる。
「その出会いに役立つかはわからないが、先生としてではなく人生の先輩として君たちに伝えたいことがある。もちろん成績には関係ないから、退屈なら寝てもらっても構わない」
「じゃあオレは寝かせてもらうぜ」
そう言ったのは中山だった。彼は机の上に両前腕で枕を作り、そこへ額をつけて座ったままうつぶせの体勢になる。
寝てもいいとは言ったが本当に寝るヤツがあるか。
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