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「ええ。その代わり」
ここからが直親にとって本当の報酬だった。『その代わり』以降の言葉を依頼人に飲ませるため、彼はしばしば報酬の額を大幅に下げるということをしてきた。
「もし私に何か妙なものが見えたら教えてください」
「妙なもの…とは何です?」
「これはごくまれなことなんですが、同じ土地に関係する者にしか見えない霊というものがいるんです」
「ええっ? 初めて聞きましたよ、そんなの」
ごくまれなことなのだから、素人が初めて聞いても不思議ではない。しかし地主は驚きのあまり、そこまで頭が回らなかった。
直親はそれを指摘することなく相手に乞う。
「あの学校に憑いていた霊は特殊なものでした。地主であるあなたに確認をお願いしたいのですが」
「か、確認と言われても…私のような素人には何も」
「その目で見ていただくだけでいいので、どうか」
「はあ…なんだかわかりませんが、先生がそう言うなら」
地主は首をかしげながらも了承した。
「では、お願いします」
直親は両手を広げる。
体の正面すみずみまで、地主に見てもらった。
「…特に、妙なものはなさそうですが」
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