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「い、いきなりだったのでちょっとわからないです」
「わかった。ありがとう」
教師は、中山にしてみせたのと同じようにゆっくりとうなずく。
笑顔のまま生徒たちを見渡すと、ついに答えを口にした。
「なんで悪いことをしてはいけないのか? 先生が思うに、それは…依存の可能性を、自分の中に生まれさせないようにするためだ」
「依存の、可能性…?」
教室が再びざわめく。
だがそれは長続きしない。語り手が言葉を続けると、ざわめきはすぐさま霧散した。
「先生なあ、テレビで警察モノの番組を見てたんだ。そしたら万引きした人が捕まっててな。その人が言うには、やめようと思ってもやめられないらしい。つまり依存してしまってるんだな」
してしまってるとは言うものの、教師は依存を悪だと断じるつもりはない。
「何に依存するようになるのかは誰にもわからない。誰にも、ということは自分にもわからないんだ」
「自分にも…?」
一番前の席に座る女子生徒が思わず声を漏らす。
教師は彼女に顔を向けると、唐突にこんなことを訊いた。
「今、おでんもコンビニで気軽に買えるが…三上はどの具が好きだ?」
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