1人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
気づいた時にはもう駆除できないほど多くの花に取り囲まれ、自分の意志という名の養分を吸い取られることになる。
「人間は、どんな刺激にもある程度は慣れる。万引きがどれほどスリルに満ちていても、いずれ慣れてしまう。そうすると、もっと強い刺激を求めるようになる…終わりがないんだ」
「終わりが、ない…」
生徒のひとりがおそるおそるつぶやいた。
教師はそちらに顔を向け「その通り」とうなずく。その生徒だけに語って追い込む形にならないよう、あらためて生徒全員を見渡した上で続きを口にした。
「どれだけ盗んでも満足しない。また盗みたくなる。体はずいぶん大人になって、やりたいことだってあったはずなのに…気がつけば、店の人やおまわりさんに怒られている。そんなことが本当に起こる。でも君たちにはそうなってほしくない」
だからこそ、と教師は微笑んでみせる。
「悪いことをしちゃいけないと先生は思う。そしてそれを、君たちに伝えたいと思ったんだ」
種を植えなければ、芽吹くことはない。
芽吹くことがなければ、花が咲くこともない。
最初のコメントを投稿しよう!