スカートの中

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 イケメンでチャラくて馴れ馴れしいのが流星(りゅうせい)。真面目でしっかりしてるのが大介 。大人しいのがモカト。いや、モカトは大人しいというより人付き合いが苦手で、特に女性への免疫が無いタイプに見える。  最近話題になっているファンタジー映画の話題になったとき、大介がモカトに話を振った。その途端、モカトは火が付いたように語りだした。  原作がどうとか、声優の演技がどうとか。モカトの語る様子に、奈津子と瑞希が引いている。それに気づいた大介が、話題を変えようとするが止まらない。 「そもそも、原作の主人公の性格を映画は表面的にしか描いていない」  みちゃこは、モカトのような男が苦手。出来れば関わりたくない。しかし、話題になっている映画の原作小説は大好きで、映画の方には納得出来ない。その不満が、モカトの主張と一致していたので、つい反応してしまった。 「原作の主人公って、もっと口下手な感じだよね」  みちゃこの反応に、モカトは嬉しそうに加速した。アルコールで冷静な感覚失っていたみちゃこも、モカトのマシンガントークに共鳴し、2人は小説の話題で盛り上がる。 「モカト、みちゃこちゃんは運命の人じゃね? こんなに話の合う人いないだろ」  流星の冷やかしを、真っ赤になって否定するモカト。そんな様子を見ていて、みちゃこもモカトをからかってみたいという衝動にかられる。 「私はモカトは無しじゃないんだけどなー」  しどろもどろになるモカトが可愛らしく感じ、みちゃこは更に追い打ちをかける。会話の流れでモカトにボディタッチするとモカトは真っ赤になり、流星はくすくすと笑う。  日付が変わる頃、大介と瑞希が終電だからと先に席を立った。しばらくして流星が、注文したロングアイランドアイスティーをみちゃこの前に置く。みちゃこがそれを少し飲んだところで、流星が店を変えようと言いった。 「みちゃこちゃん、飲み物残しちゃだめ。早く飲んで」  流星はそう言いながら上着を羽織る。みちゃこは、慌ててロングアイランドアイスティを飲み干す。既に強いウィスキーロックを数杯飲んでいる為、このカクテルは清涼飲料水のように感じられた。 「さて、次の店行こうか」  そう言って先導する流星の腕に、奈津子が絡みつく。その後ろを、みちゃことモカトが並んでついていく。駅前通りから暗い裏道へと入り、飲み屋とは明らかに違う雰囲気の建物の前で流星が足を止める。その建物を見て狼狽えるモカトを流星が笑う。 「みちゃこちゃん、モカトをちゃんと卒業させてあげてね」  流星と奈津子が先に自動ドアの中に消える。ぎこちない様子のモカトを見ながらみちゃこは意味ありげに笑い、手を取り身体を寄せて歩き出す。すると、モカトも抵抗することなく歩き出した。  自動ドアをくぐると、客室のパネルが並ぶ廊下。既に、流星と奈津子の姿はない。みちゃこは、モカトの表情が期待なのか不安なのかは分からなかった。再びクスリと笑いかけてから、宿泊8000円と書かれた客室パネルのボタンを押した。
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