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シャワーを浴びている間に、みちゃこは急激に冷静になっていくのを感じる。もし記憶や意識がお酒で飛んでいたならまだ良かった。しかし、その両方がしっかりあった。無かったのは判断力だけ。
既に、入室時に8000円は支払い済みである。いや、お金のことは置いておくとしてもだ。童貞らしき男の手を引いてここに来た。それなのに、何もさせずに帰る。そんな酷なことが出来るほどみちゃこは若くない。
モカトに抱かれる覚悟を決める。いや、心のそこではそうしたいという意識があるのも自分で分かる。それが「お酒によるものだ」と、心の中で言い訳なしながら。
大きなバスタオルを身体に巻いて洗面所を出ると、目の前のベッドにモカトがちょこんと正座している。バスタオルがはだけないよう胸の上で抑えながら、ゆっくりとモカトの横に腰かけ、身体を寄せる。無言のまま、横からモカトを見上げると、がちがちに緊張しているのが分かる。無言のまま、みちゃこから唇を合わせ、わざとらしくチュッと音を立ててすぐに離す。
再び顔を近づけ、息がかかるくらいのところで止まり見つめ合う。すると、しびれを切らしたように、モカトがみちゃこの両肩をおもむろに掴む。
「みちゃこぉ、好きだよ」
一瞬、笑ってしまいそうになるほど甘ったるい不自然な声で、モカトが囁く。同時に、左手がバスタオル越しに胸へ触れ、続いて右手がタオルの裾から侵入する。
過去に女性経験は無いことが、モカトのぎこちない手つきに表れている。
まるで中学生男子のように、女性の喜ばせ方も悦ばせ方も知らない攻め方。不慣れな手つきで的外れなところを触ったり、気持ち良さよりも痛みを与えてきたり。まるで、AVをお手本にしたような。
インターネットが今ほど身近になる前は、こんな男が当たり前だったと懐かしさを感じる。そんな若い頃の感覚が蘇り、みちゃこはむしろスイッチが入る。
モカトの頭を両腕で抱きしめ、顔を胸に押し付けると、この30歳の男が少年であるかのように錯覚し、無性にいとおしくなる。そのまま体重を預けるように、モカトをゆっくりと布団に押し倒した。
身体の芯に、雷に打たれたかのような衝撃が走る。同時に、ドクドクと快感が放出された。
自分は何をやっているのだろう。そう思いながら放出した物をティッシュで拭き取る。真知子が書いた小説を読みながら興奮し、絶頂した。
グラスのウィスキーを一気に飲み干すと、急激に眠気に襲われる。瓶を見ると、既に半分以上空けていた。
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