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ここは転生課です。御用がある方はあちらの書類をご記入の上、受付でお渡ししてください
異世界転生。
それは現世に置いて役目を終えた人の子が生まれ変わり、新たな世界で人生を送るという作風の一面である。
その際に必要なのは、三つの刺激的な材料が必要である。
一つ、適度な死因。
昔は事故で未練があるものが呼び出されたが、最近では、殺人事件や病弱な体なのが多く見られている。
二つ、不幸な人生。
かつて生きていた時に強い未練と悲しみが人において、新たな道を切り開かせようとする。
最後に、そんな彼らを送り出す神様。
スキル、ステータス、新たな世界の状況の説明。今の現状の説明をしてくれる送り出してくる神様。
時には、送り出した先にサポートセンターの役割も担っている存在が必要。
これが異世界転生である。
ほんの少しの幸福感を満たされても人間と言うものは、新たな人生を求み、輪廻転生と言う架空法則から我々を生み出す。
新たな幸福感と満足感を満たすために、欲深いながらも美しく可愛らしい。それが人。
異世界転生課。
そのような多くの人たちを新たな世界にへと送り出すのが、私の役目だった。
けれども、名前は無い。作品や関係する世界によってきめられている名前にコロコロと変えているために、私自身、名前を知らない。
「これは必要で、採用。今度、顔合わせを行うことにして。これは資格なし、廃棄………これは」
いつもと同じように上層部から送られて来たあらゆる世界の死者の魂を選別していると、ある一枚の羊皮紙が私の視線の中に舞いこんでくる。
私が手に取ったその羊皮紙には、パッとしない影の薄そうな青年の顔が映っており、私はその顔を見た瞬間、彼と初めて出会ったことを思い出す。
「名前は……あぁ、確か高橋 弘樹ですか。印象の薄い名前ですね」
そう言いながら小さく笑みを浮かべながら、彼の経歴が書かれた羊皮紙を眺め続ける。
輝かない経歴に、輝かない名前、輝かない性格、努力だなんだと言いながらも途中で飽きて、諦めるような男。それら全てにおいて煌びやかな未来があるとは思えず、磨いても綺麗な宝石にならない薄汚れた道端の石、と言っても可笑しくない存在だった。
(けれどなぜ彼が?)
私の手に握る羊皮紙の彼は確か、数年、数百、それとも数千年前? に送った異世界転生者の一人だった気がする。
いじめに耐えきれず自殺した所を我々が勝手に異世界転生の素養アリと決めつけ、彼の望もうが望まないだろうが関係なく異世界に送り出した青年だった。
だがその輝かない人間性に反して我々が勝手に素養アリと決めた存在だった故に、その能力値は突出していたものだった。その才能を見込み、私は彼に平和でもなく大乱の世でもない不完全な世界、剣と魔法が主流となる冒険の世界に送り出したはずなのに、なぜ、こんな所にいるのだろうか?
「………あってみる方が良いですね」
机に頬杖をつきながら私はそんな事を言うと、机の上になった書類の山を蹴散らすと目の前に一つの椅子を呼び出す。
『来なさい』
私と机、そして、私の目の前にある椅子以外何もなくなると、私はそう静かに宣言する。
瞬間、何も無い所から、羊皮紙に描かれていた高橋 弘樹とやらの青年を呼び出す。
「む?」
だが私の前にいたのは、ボロボロとなってゴミのように倒れている薄汚れた雑巾だった。
いや、違う。よく見ていると、薄汚れた雑巾の様に疲れ果てている高橋 弘樹だった。
「寝ていますか? 起きていますか? ………目が覚めてみるまで待って見ますか」
倒れ寝ている彼に話しかけてみるが、何も反応を見せてこない。
しょうがないと思いながら、規定に決められているマニュアル道理に動いて見せる。
一時間後……
「ん、ここは、あの場所?」
「目が覚めましたか」
「あんたは……」
「お久しぶりですね。覚えていらっしゃいますか?」
一時間と言う長い時間を無駄にした結果、高橋 弘樹は目を覚まし、私の目の前にゆっくりと立ち上がった。
彼のその様子にはどことなく驚きを含んだ表情を見せており、再び私に合うことに夢かと言わんばかりに目を見開いていた。
「まずはそこに座ってください」
二度目の案内に、私は焦ることなく目覚めた彼を私が呼び出した質素な椅子にへと案内する。
彼もさすがに二度目となると慌てたり、驚いたまま硬直をしたりなどは無くなり、私の指示に何も疑いもせずに彼は私が呼び出した席にへと座り始める。
「えっと、これは」
「ここはあの世です。あなたは一度経験した過去がありますからこれ以上の説明はいりますか?」
「い、いや、今のこの状況を」
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