麻生の場合(呼べば来ると思うな)

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麻生の場合(呼べば来ると思うな)

私の周りの男だけだと思うんだけど。 名前、呼んだら来ると思ってますよね? うちの父がそうだった。 でも私は返事しかしない(笑) それも幼心に「え、来てほしいなら来てって言えばいいじゃん」って思ったんだよね。 そして、それでも私は「呼ばれたら行く」が習慣化しなかった、成人しても私は名前呼ばれたくらいじゃ腰は上げない(笑) たぶん自分が、用があれば自分からそばに行くし、来てほしいなら「来て」っていうのが当たり前って思ってるからだと思う。 で、結婚してから旦那にも思ったんで、旦那にはいうよね(つおい)。 特に子供に対してそうなんで、子供が小さいときに叱った覚えがある。 「は? なんで名前呼んだだけでそばに来ると思ってんの? あのさ、犬だって名前呼んだくらいじゃそばに来ないよ? comeって言われて初めて来るんだよ」 そうかとかなんとか言ったけど、相変わらず名前だけで呼びつけようとしています、絶対これは男という性がそうさせてるんじゃないだろうか? 再教育のため、私が子供のそばにいれば「なあに?」ですよ、そこで初めて「ちょっと来て」。 そんなことに思いを馳せてしまうのも、舅のせいよ。 いまだに「は???」って思っていることがあるんだが。 だいぶ前にあれが来たのよ、『裁判官候補者』に選ばれましたってやつ! あ、もうだいぶ前なんで、書いちゃいますよ。 でも候補になったことは公にしないでくださいって書いてあるんですよね、あーSNSには上げるなってことかあ、と思いつつ、旦那にはこっそり言ったら、 「でも会社とかには言わないとだめじゃん、休まないとだろ」 ああ、そっか。なもんで、うちの実家には報告、そしたら実姉の旦那さんとそのお父さんは候補になったことがあるそうです。 「でもふたりとも、なにも呼ばれずに終わったよ」 そっか、じゃあ私も裁判には出ないで済むかな思い、そんなことも忘れていてたある日、それは来ましたよ、裁判決まったから参加してね、ってやつが。 それが郵便局員さんの手渡しなんですけど、いつもそういうのの応対は舅が出るんですよね、んで、その時ですよ。 1階から「璃藤さーん」と呼ぶわけです。 私、なぜ呼ばれているかも判らないから、部屋から「はーい」。 「璃藤さーん」 「はーい」 「璃藤さーん」 「はーい」 ──あのさ、本当、名前呼ばれたら近づくのは常識なんですか? 申し訳ないけどその常識、私にはないんだよなあ。声の調子すら変えずにひたすら名前を呼ばれても。 「璃藤さーん」 「はーい」 「璃藤さーん」 「はーい?」 さすがにむかっとしてしまいました(笑)いや、怒るのは私じゃないだろうって? 「璃藤さーん」 ほんと、これくらい呼ばれて、私はやっと重い重い腰を上げました、内心「んだよ( *`ω´)」です。 階段の降り口までくると玄関が見えます、そこに立つ局員の方。 「あの、ご本人じゃなくてもいいんですけど」 要は受け取りのサインが欲しいのよ! つか舅よ! 「ちょっとー」くらい言えよ!!! その一言でスムーズに事が動いただろう! そんなちっちゃいことが面倒なのかよ!っていまだにモヤモヤしているわけですよ。 それだけの大事件があっても、きっと私は変わらない、なぜなら、私は「名前を呼ぶ=そばにいく」じゃないから!!! あー、でもこの時の一件は、もっとむかつくのがその後の舅の言動だな。 裁判員なんかやりたくないって感情を押し付けるの、自分は年齢でやらないくせに「嫌だ、嫌だ」って。 あのね、これはたぶんモノカキを趣味にしている者の習性だと思うのだが、どんな経験も「お話につながる!」って思っちゃうんだよね。 そもそも陪審員制度もいいじゃんって思ってた人間なので、やっと日本もかって思ってたし。 ガチでリアルな裁判を内側から体験できる機会なんて滅多にないじゃん、やるやるー。 そりゃメチャグロな殺人現場とかは勘弁だけど、やらなきゃいけないならやるー! ──けど、そんな気配出したら「変な人」だと思われる、いやすでに思われているだろうけど、太鼓判は勘弁だな。 適当に「そーですねえー」とか返事をするんだけど。 「死刑とか他人様の一生を決めるなんて、無理だよねえ」 そんなことを言う舅に「はあ」と返事をしつつ、別にそれだって私ひとりで決めるわけじゃないし、実際それを言い渡すのは裁判官なんだから、私は気にしないなあなんて思いつつ、適当に話を合わせて。 でまあ、こっそりと、意気揚々と「参加します!」って丸したんだけど──。 よくよく見たら、かなりタイトなスケジュールなんですよね。3週間くらいの間に、びっちりと9時5時で来いって書いてある……。 いや、専業主婦とはいえ、それは無理。1日2日なら洗濯しないとか、朝昼晩カップラーメンとかで頑張れるけど、3週間! おおう……書いちゃった丸にバツをして、でもメモ欄とか備考欄的なものがないので、余白につらつらと書きました。 「毎日家事終えて、徒歩と電車で通うんじゃちょっと9時は無理だわ~。買い物行ってくれる人もいないしー。毎日遅刻早退していいんなら参加するよぉー、よろぴこ」注、要約(笑) さて結果は? 見事落選(´;ω;`) やる気はあったんだよ、信じてくれ。 しかもいい日当も出る……お小遣いになると思ったのに……( ̄ロ ̄lll) まあ今回やってないので、またいずれ機会はあるそうです。 その時には是非! 子供の手が完全に離れたころに……! end(2021/06/03)
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