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麻生の場合(シンクロニシティ)
先日、三男の夢を見ました。
場所はうちの近所だったけど、三男はもっと幼かった。
でもイメージは小学校へ向かっているから、やはり最近のことなのだろう。
いってらっしゃいと言うと、にこっと笑って、それから足が痛いと訴えるのでそばに行って靴の具合なんかを見て、そんな私を見てあの子はにこにこしてて……そんな夢でした。
起きてからふと思い出す、ああ、今日は月命日じゃん。
午後になってお墓に行きました。
門扉を開けて入って中ほどまで行くと、背後でまた門扉が開く音が。
ああ、他の方も来たんだなあなんて思いながら我が家の墓に行って、しゃがみ込んで墓石に掘られた名前を撫でながら話しかけてました。
呼んだのかいって。
するとあとから入ってきた方がその脇を通りました。
うちより奥は3基しかないんですけど。そこの方でしょう。
中年の女性でした。
「こんにちわ」
声をかけると先方はぺこりと頭を下げただけで通り過ぎようとしました、一歩進んで戻って、うちの墓を覗きます。
なんだろう?と見上げると、
「お子さんのお墓?」
具体的にはなんて話かけられたかはよく覚えてないんですけど、そんなニュアンスでした。
「うちはね、姉が亡くなったんだけど、同じ日だったの」
え、こんなとこで会えるなんて凄い偶然──と思いましたが、月命日ですから墓地に来るのは当然と言えば当然ですね。
「うちの娘がそちらのお子さんの名前を見つけてね、びっくりしてたのよ、同じ日に11歳の子が亡くなってるって。どうしたの?」
そりゃ11歳で亡くなるなんて、やはりあり得ないですよね。赤の他人ですが隠す事でもないので全部話しました。
「そう……姉はずっと闘病してて、緩和ケアで亡くなったんだけど、それでもショックだもの。急じゃあ辛いわね」
同じ頃に家族を亡くした者同士です、お互いに慰め合い、励まし合う事が出来ました。
こんな引き合わせも三男がしてくれたのかなあなんて思うと、ちょっと怖いくらいです、嬉しいですけど。
お墓は背中合わせの、はすにあります。
「お墓もこんなに近いなら、行く時も来る時も、お姉さんがご一緒してくれるかもしれませんね、嬉しいです」
私にしてみたらまだまだ幼い子供です、迷子にならないとも限らない。
言うと相手の方も微笑みます。
「子供がいない夫婦だったからね、可愛がるかもしれないわ」
本当に。
本当に、亡くなってからもあの子はみんなに笑顔をするんだなあと思いました。
4か月です。
あっと言う間だったような、長かったような。
あの子がいない時間は、永遠なんですけど。
ごめんなさい、新しいエッセイではあの子のことは書くまいと思っていたのですが、偶然の重なりに驚いたので書きたくなってしまいました。
end(2021/2/1)
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