高橋という男

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   一方高橋は、先述のようにブログを書いて広告費を得るほか、スマートフォンのオークションアプリで違法な転売をして生計を立てている。  みんな馬鹿だ。僕たちにお金をくれる人は。  そう何度心の中で呟いたか、高橋はその真偽をもう推測することも出来ない。その文字の繰り返しで、地球を一周出来そうだ。もう飽き飽きだ。  祖父の時代ならば、わざわざ怪しいやつから買わなくても、山に行けば美味しい柿なんか幾つも取れた。  誰かが販売しているからといってそれが本当に信頼性のあるもので、誰かが値をつけたからといってそれが本当にその通りの価値があるものだとは限らないということが、どうしてわからないのだろう。  父の時代ならば、確かにCDは珍しかったのかもしれない。だが大して高価なものではないだろう。ジュディ・オングの「魅せられて」を収録していたCDの売り上げはすごかった。いつもの十倍は売れたと父がはしゃいでいた。  それだって近所の定食屋に設置されたテレビから流れてきた音声を録音しただけだ。たかが二百円の商品と思って、話題性だけで群がってくる団地の高齢者たち。  どうしてこの人たちはこんなにも頭が悪いのだろう。  父の作ったCDには二百円は高すぎる。  そして現代、スマートフォンで一度検索すればわかるようなことを、どうして何個もブログを経由して確かめようとするのだろう。  どれも正解とは限らない、どれが正しい情報かを正確に判断できる人が、この世に何人いるだろう?   技術が進歩するほど世界はばかになる。賢い他人が作ったものに乗っかって、自分は頭が悪いのに、どこへでも行けるようになっていく。そんな恐ろしいことがあるか?  転売人から買ったチケットでコンサートに行ったら、自分の席に「こちらのお席は転売が確認されたため、無効とさせて頂きます。」とか張り紙がされているかもしれないと、少しも考えないのだろうか。  
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