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高橋は、自身のことを蚤のようだと感じている。とにかく、寄生虫のような――広くは、害虫のような。
肉眼では視認できないほど小さなところは、自分の存在のちっぽけさにそっくりだし、動物の血を吸うところは、血ほど大切な人様の努力にあやかって生きる自分にそっくりだ。しぶといところも、きっと、誰からも嫌われているところも。
……そうやって自分を責めている時が一番楽だ。なにかを目指している時が一番幸せだ。
何者でもない、自分自身で生きるのは、つらい。
何かに形容される自分である方が、きっと、生きやすい。
泥棒でもいい。柿泥棒でも、音楽泥棒でも、何でも。ブロガーでも、ニートでも何でもいいけれど、何かになりたい。
何かの枠に収まろうと、そうしたらその原型が僕を守ってくれるはずだろうと、手を伸ばすときが、ただ、幸せなのだ。
その先は、見たくもない。僕は弱いから。
流行りものは、アイドルだけでなく、漫画、アニメ、ドラマ、食べ物まで全て把握して、それぞれのジャンルごとにブログを書いた。そ
れは全て似たような記事を切り貼りした、オリジナルのようなコピーアンドペーストだ。それが、創作の中で一番卑しく、しかし一番基本的なのだと高橋は心得ていた。
オリジナルなんてものはこの世にはないことを知っていた。
彼のブログは、業界ではかなり稼いでいる方なのだが、彼を称賛するブロガーはいない。彼のブログはとにかく安っぽく、人間の心に響かない文章であるからだ。稼いでいるといっても、その本質はどう考えても量にあるからだ。寝苦しい夜、布団の中、何時間にも渡るネットサーフィンで、ふと立ち寄るようなブログなのだ。「タカハシの芸能リポート! 気になるアノ人を丸裸」なんて、タイトルも胡散臭い。
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