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身体を離してベッドに横たわったあと、俺はウトウトしていたらしい。 気が付くと、隣に彼女はいなかった。 ハッとして身体を起こすと、バスルームのドアが少し開いて、細い灯りが差し込んでいるのに気づいた。 この日は平日だったのと、うちの会社は毎月の常連なので、シングルの予約がセミダブルの部屋になっていた。 客が少ない日には、同じフロアに集中させるためだ。こういうことは結構あるらしい。 バスルームのドアの、向かいにある大きな全身鏡に、バスルームの中が映っている。 ホテルの白いローブを着た彼女が、照明に照らされた中で何かしているのが、鏡越しに映って見えた。 喉が渇いていることに気づいて、ゆっくりと起き、ベッドから立ち上がると、脇に落ちていた自分用のローブを羽織る。 コンビニの袋からミネラルウォーターを出すと、蓋を開けて一気に飲んだ。 一緒に買ったワインの瓶が開栓されて、量が減っている。 「(セイ)さん、こっちに来て」 バスルームから美優の声がした。 ここはセミダブルの部屋らしく、シングルに比べるとバスルームもそれなりに広い。 ドアを開けて左手が、透明なアクリルの壁を隔てたバスルームになっていて、突き当たりにトイレのドアがあった。 美優がシャワーを浴びたらしい水滴が、アクリルの壁に飛んで筋になっているのが、妙に生々しく見える。 右側は洗面台で、壁一面が鏡になっている。 二人並んで使えるようになのか、広い洗面台がしつらえてある。 その鏡を背にして洗面台の上に座り、脚をゆらゆらさせて美優が待っていた。
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