第20話 ただ一つの誤算

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「ああ、本当だよ。あれは全部本当の気持ちだ。」 私も手を伸ばし、圭司の手を握った。 「疑ってごめんなさい。圭司には圭司の、事情があったのにね。」 「いや、俺が悪いんだ。由恵には、話すべきだった。妙子の言葉に、惑わされずに。」 「結局、妙子さんとはどんな関係なの?」 私は圭司の顔を覗き込んだ。 「妙子は、仕事仲間だよ。仕事用にあの写真を撮ったんだ。別れさせ屋は一歩間違えれば、ストーカーに追われる危険性があるからね。ちゃんと恋人がいるって示すためにも必要な写真だったんだ。」 「それを私は、本当に疑ってしまったのね。ごめんなさい。」 すると圭司は、私の手を口元に当てた。 「これで全部だ。全部話した。君にもう嘘はつかないよ。」 「ありがとう、圭司。」
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