51人が本棚に入れています
本棚に追加
「島田君、なにやら人相の悪い人達が入って来ているね。」
「でも、村民も慣れたもんさ。
以前は自分達も同じ、仲間だったから彼らの気持ちもよく分かると思うんだ。
新しく入った彼らだって、少しは変わろうとする気持ちは有るはずだよ。
誤って麻薬に手を出しても元の世界では誰も止めてくれない。
刑務所から出て来てもお金が無いから、また、同じ事の繰り返し……彼らは心の何処かで怯えながら生活してた人も少なくない。
ここは、皆んなが助け合う自立村なんだ。
誰も偏見も持たず、困ったら助け合う村なんだから。」
元の世界も警部補の話だと少しずつ変わろうとしているそうだ。
警部補達は海中船を使って事前に犯罪を食い止め、犯罪者を新自立村に連れて来て警部補達は元の世界を犯罪者撲滅に頑張ってくれてる。
しかし、そんな事くらいで元の世界は直ぐには変わらないだろうし、何年経っても、犯罪は後を経たないだろう。
でも、人って少しのタイミングで変わる事が出来る。
僕だって、あの時、未来の僕に逢っていなかったら、どんな大人になっていたか分からない。
一つのチャンスで自分は変われる!それが自立村……
あっ……何故、僕は二人いるのかって⁇
皆んなだって、タイムマシーンで行き来していたら君の近くに、もう一人の自分がいるかもよ。
僕はたまたま、森の中で未来の僕に誤って会ってしまったけどね……
村で一番の働き者の伴さんがタケルに声を掛けた。
「タケル、畑で今度は何を作ってるんだ!」
「あっ、これは、小人になる薬草の栽培をしてるんですよ。
皆んな、どんどん自立していくから小人草が追いつけなくて……
それに隣の畑は虫草。
最近、嬉しい事に作っても売れないんですよ。
今年も沢山、廃棄かな?」
「それはせいが出るな!この前、健太と島田で自立村に行ってたんじゃないか?」
「はーい。そうですけど……どうかしましたか?伴さん。」
「しかし、ここでお前らしい奴を見たんだ……」
「えっ……そんなはずはないですよ。
僕は、前の自立村に行ってたから。」
「おかしいなぁ……⁇
お前が健太の所に行っていると思ったのに、タケルが大量の珍しい果物や苗を湖の近くに置いて行く姿を見たんだ。
すると、お前は逃げるように海中船で立ち去った。」
それって未来の俺??
未来の僕も僕のいない所で僕達を応援してくれている。
川のせせらぎや鳥のさえずりと共に村人は目を覚まし、今日も村中に皆んなの笑い声がこだまして、新自立村の朝が始まった。
「おい!蓮さん、しっかり働かないと次は無いって言ってたよ。」
「絶対に心を入れ替えるよ……殺される直前で中年のタケルが俺達の命を救ってくれたお返しに、俺は絶対に新自立村で更生する。
そうだよな!ダン、ボン」
「アンタから言われたくないよ……」
ーおしまいー
最初のコメントを投稿しよう!