自立村

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 確かに村の人達は笑顔に溢れている。  でも、未来のタケルの家にはテレビなどもない。  村の人々は誰一人、スマホなんて持ってない。 「お兄さん、何故、便利なスマホを使わないの?」 「こ、ここは、地図に載ってない村だから電波も届かないし、こ、この土地に入る時は、取締官から、没収されるんだ。  取締官って言っても、む、昔は彼らだって自立出来ない連中だった。  あっ、また一人、強制連行で連れてこられているぞ!窓の外を見ろ….」 「離せ!離せよ!俺のスマホを返せ!  俺は何一つ、悪い事をしてないのに、何故こんな所に連れてこられるんだ!」 「君は、バクチで自己破産してるのに、なにも変わろうとしていない。  ここで君は変わるんだ!立派な人間になるまで私と共に生活して行くんだ!」 「お兄さん、あの人強制連行でこの村に連れて来られたの?」 「取締官は、元の世界に行って自立出来ない連中を集めて、この自立村で更生してるんだよ。  で、でも、ほとんどの連中は元の世界には帰らないけどね。  居心地がいいんだろう……  お、おそらく、私達は現実の世界では、行方不明になってるんだろうな。」 「ところで、村の人達って皆んな、背が低かったけどお兄さんは何故、普通の身長なの?」 「お、俺はまだ、自立村では自立してないのさ!  村の儀式があって、皆んなから認められたら、背が小さくなるんだ。」 「笑える、お兄さんは小人になる為に自立するなんて!」 「ここでは、小人になるのが名誉な事なんだ。」  僕は、ハッとした。 「僕が、この兄さんだったら、僕は自立出来ないで、この村に連れて来られたって事なの?」
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