自立村

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「松田、お前も馬券買うか?俺が頼んでおくぞ!」 「俺は全然、競馬なんか興味無いし、俺はいいよ。」  松田浩次(タケルの父親)  「おい、松田、お前は真面目だね!  せっかく頼むんだから、二百円だけでも良いんだぞ!  二百円が何十倍にもなるかも知れないぞ!」 「そんな夢を追っても一緒さ!じゃ二百円だけで良いよ。」 「馬券の数字を三つ言え。  三連単で頼んでおくよ。」 「じゃ、タケルの誕生日で、九月二四日だから九・二・四でいいよ。」 「全く、適当だな!それで買っとくよ。」    同僚は慌てた様子で声をひそめて浩次の耳元で言った。 「ま、松田、あ、当たったぞ!」 「えっ、本当かよ!松田、今晩、一杯連れて行けよ!」 「いくら、当たったんだ?」 「三四五万円だ!高額配当だから払い戻しは本人が窓口に行って現金を受け取らないといけないんだ!」 「えっ……二百円が三四五万?」 「早く、早退して競馬場に行って来い!  お金を受け取ったら、ガードマンを呼んでタクシーに飛び乗れよ。」 「分かったよ。」 「約束だからな!今日はスナック貸切だ!」 「俺はそんな約束してないぞ!」 「セコい事を言うなよ。」  未来のタケルは会社から、出て来る父を追った。  父は不思議そうに何回も首を振り、地下鉄に乗り込んだ。  何だ、競馬場か?  おかしいなぁ……何日も尾行してるのに、初めて、競馬場に行く所を見たぞ……  そうか……今まで、誰かに頼んで馬券を購入してたんだ……  父が競馬場の職員に尋ねていた。 「あの……馬券が当たったみたいなんですが……」 「何処の自動支払い機でも、お支払い出来ますよ。馬券を入れて下さい。」
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