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「ちなみに、当選金額は?」
「三四五万と言ってました。」
「ち、ちょっと待って下さい。
百万円を超える金額になったらあそこの窓口に行って下さい。お、おめでとうございます。」
父は、そそくさと何も慌てる事無く窓口へと向かった。
「高額配当、おめでとうございます。」
「ほ、本当に二百円がこんな金額になったんですか?」
父は、やっと目の前に有る現金を見て現実に気づいた。
「えっ、う、嘘だろ! な、何だ、あの大金…」
未来のタケルも唖然とした。
「お客様、現金を持ち運ぶと危険なので、警備の人をお呼びしますので競馬場入り口まで一緒に行って下さい。
入り口にタクシーをお呼びしましょうか?」
「は、はい。お願いします。」
「あの……早くも、怪しい人が窓の外でお客様を見てますよ……」
未来のタケルは視線に気付き、慌てて現場を離れた。
その晩、父が家に帰って来たのは夜中の零時を回っていた。
「お父さん、珍しいわね……今まで飲み会?
誘われても行かない人だったのに、たまには良いんじゃない。明日は休みだし。
明日、タケルが観たがっていた映画、連れ行ってあげましょうよ。」
「明日か……俺は二日酔いみたいで無理かも知れない。すまないが二人で行ってくれないか?」
「仕方ないわね……次からは飲み過ぎに気をつけて下さいよ。」
タケルは、未来のタケルから情報を聞いて、お父さんの人生の歯車が狂い出した事に不安を感じた。
不安は的中した。
朝、父は目を覚ますと競馬場へと向かった。
僕達もその日は日曜日だったので、三人で僕の父を尾行した。
「一人じゃ、全く買い方なんて分からないぞ……」
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