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そのとき、私は前のアカウントでヤスと交わした会話を思い出した。
たしか写真について。
そこから個人情報が洩れる可能性があるのだから、場所がわかるようなものを載せるべきじゃない、と。
たしかに私は、部屋の窓から撮った写真をアップしていた。その写真とともに、140字小説を載せていたのだ。
小物や、顔が見えない角度で撮った写真。
初めのころは、そんなものをアップしていた。
風景に見覚えがあって、写真に写っていたカバンを持った女子高生を見かけたとしたら。
私とSNSの「ミライ」を結びつけることだって、不可能じゃないのかもしれない――
私はまたアカウントを消して、新規で作った。
だけどヤスは、やってくる。
怖くなって、どうしようもなくなって、私は恥を忍んでお母さんに打ち明けた。
「ストーカー!?」
「……だって、そうとしか思えないよ。なんか、実際に見てないとわからないようなことも言ってくるし」
スマホの画面を見せると、お母さんは目を見開いて固まった。
「ねえ、こういうのって警察とかに相談したほうがいいの?」
「や、待って未来。警察は、ちょっと……」
と、お父さんの書斎に目をやりながら言葉をすぼめた。
たしかにお父さんは、警察沙汰とか、そういうの嫌うかもしれない。頭固いし、揉め事とか顔をしかめるのが想像できる。
だけど、
「娘が危険かもしれないっていうのに、それでも自分の体面のほうが大事だっていうの!?」
もういい、お父さんなんて大キライだ!
お父さんの機嫌を気にして、なかったことにしようとしているお母さんだってキライだ!
小さい子どもみたいに泣き喚いた私に、お母さんが焦ったように言った。
「違うの、未来。そのヤスってひと、たぶんお父さんだから!」
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