私と妹

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「目が見えるようになるの?!」 「うん。手術すれば見えるようになるって。お医者さんが言ってくれたの」 「そうなんだ。これで、私が必要なくなっちゃうのかぁ」 「そんなことないよお姉ちゃん。いつまでもずっと、そばにいてよ。それにお姉ちゃん。私、目が見えてもすぐに見たくないんだ」 「え? どうして?」 「私ね、初めては海が見たいの。お姉ちゃんが言ってくれた、両手を広げても届かない砂浜に、青い海と青い空が見たい。それをね、初めての、見える目で見たいんだ。だからお姉ちゃん、最後のお願い。そこまで連れて行って。だめ?」 「もちろん。妹の最後のお願いをだめなんて言うわけないじゃん。お姉ちゃんにおまかせ!」 「ありがとう! お姉ちゃん大好き!」  妹は口角を上げて笑うも、私はうまく笑えない。  目が見えたら、バレてしまう。妹についた、たった一つの嘘が。  もし、私が嘘つきだと知ったら。妹は私のことを嫌いになってしまう。 「それで、いつ手術なの?」 「夏休みに入ってすぐ。それから、退院してすぐ海へ行くの」 「そうなんだ。じゃあその最後の約束まで、私は付き合うよ」 「ありがとう」 「困った時はお互い様。それじゃあ、私はそろそろ部屋に戻るね。ちゃんと寝るんだよ?」 「うん。ちゃんと寝るよ。おやすみ、お姉ちゃん」 「うん、おやすみ」  妹とおやすみを言って、私はフラフラと自室に戻った。  ずっと、どうやったらバレないんだろうって。汚いことばかり考えて、気づいたら私は、眠っていた。  次の日、私はいつもより早く起きた。  お父さんもお母さんも妹も。誰もいないリビングは冷たくて寂しくて。  私は気を紛らわすようにテレビを見ていたけど、ニュースばかりですぐに飽きた。  だから、普段は絶対にするのことのない、朝の新聞を取りに行くことにした。  外に出て、ポストから新聞を取ると、向かいのおばさんと目が合う。  おばさんは庭の掃除をしていたけど、私に気づくと手を止めて。ニッコリと笑ってくれた。  私はそんなおばさんを見て、心は一気に澄み渡った。  隠すとか、逃げるとか。悪いようなことばかり考えて、私は大事なことを見失っていた。  掃除をすれば取り戻せる。私は簡単なことに気づけないほど、嘘から逃れようとしていた。  私はおばさんに深く頭を下げて、急いで家へと帰った。  明日から、今からでも掃除をしよう。キレイな砂浜をつくるには、時間がいくらあっても足りない。  私はそう思って、いてもたってもいられなくて。ビニール袋を手に家を飛び出し、ゆるい勾配を下って、海へと走った。
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