私と妹

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私と妹

 私の妹は、生まれつき目が見えない。だから私にいつも、目の前にあるものを聞いてくる。  色だったり大きさだったり。かわいいとかかっこいいとか。  私がそれらを教えるたび、妹は顔をパッと明るくして、初々しい反応を見せてくれる。  そして妹は触ったり嗅いだり。自分の全部を使って感じると、私に教えてくれた。  柔らかいとか。甘い匂いがするとか。声を弾ませて教えてくれる。  そんな私と妹のいつもを終えると、妹は決まって最後に言う。  「いつか見たいな」って。  妹は眉を垂らして寂しそうで、私は心が辛くて。分かりもしないのに、胸を張ってこう返す。  「絶対見れるよ」って。嘘をずっと言い続けた。  でも、私が嘘をついたのはこれだけじゃない。目の見えない妹をいいことに、ついた嘘が一つある。  それは海でのこと。空と海を伝えて、砂浜へと話がうつった時だった。  妹は、私にこう聞いてきた。「砂浜はどんな色?」って。  だから私は「肌色」と答えた。妹はそれに、「人の皮膚の色だ!」と驚いていた。  それから、次にこう聞かれた。「砂浜ってどれくらい広いの?」と。  私は「両手を広げても、端と端に手が届かないくらい」と答えて、妹は顔をパッと明るくした。 「砂浜っていう肌色が、ずっとどこまでも続くんだ!」って嬉しそうに。  私は左右を見て、心が苦しくなった。  本当は右にも左にも不法投棄のゴミがたくさんあって、妹のいるここしか。砂浜はない。  手を広げて届く距離じゃないけど、ずっとは続かない。大半は、ゴミの下に埋まってしまっていた。  けれど私は「そうだよ」と答えた。妹の夢を壊したくなかったから。  妹は私を疑いもせず笑った。私は心が痛かった。  あの日から、妹は海が好きになった。海のことをいっぱい勉強して、妹は私に教えてくれる。  私はそれを聞くたびに、嘘をついたことをお説教されているようで。楽しく話す妹をよそに、私にとっては辛い時間だった。
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